戦後まもない頃、先先代が目をつけたのが漁業でした。豊かな水産資源のある日本海に面する香住にあって、中でも安定して比較的長い期間操業できる底曵き船を所有し、船主として目利きするかたわら、自ら舟に乗り込み松葉カニをはじめ底曵きにかかってくる季節の魚を漁獲し、香住港に戻ってきます。新鮮な魚で幸せに成りたい。と、船は『幸成丸』と名付けました。
漁業での生計が安定してきた頃、せっかく新鮮な魚を捕ってきて、魚の事ならよく知っているのだから卸すだけでなく、たくさんの人に最もおいしい形で食べてほしい。と思うようになりました。民宿『幸成』のはじまりです。この頃から家族は皆、夜明け前でも船が帰るのを無線で聞くと港へ急ぎ、船を迎え魚の仕分け作業などしていました。
最新の装備で、昔とは比べ物にならない機能を備えた新造船でした。私たちの胸にまだ残っている、いちばん最近の『幸成丸』です。祖父の「新鮮な魚で幸せに成りたい。」の思いはいま、「新鮮な魚でお客様に幸せに成っていただきたい」と、宿のおもてなしの心に形を変えました。それが私たちの幸せでもあるからです。